肩の関節痛の原因・症状・対処法

年齢を重ねるにしたがって、

「肩に突然鋭い痛みが走って動かせない…」

「肩が痛んで腕が上げられない…」

などの肩の痛みに悩まされる人は少なくないのではないでしょうか。

服を着たり、高いところの物を取ったりするときなどに日常的に使う関節なので、痛みがあるとつらいですよね。

肩の関節は、加齢に伴い肩周辺の筋肉や腱が衰えてしまうので、ちょっとした動きで傷つきやすくなってしまい、それが痛みを引き起こしていることが多いのです。

四十肩五十肩といった症状がよく知られていますよね。

しかし、痛みを伴う疾患の中には、手術が必要なものや心臓に関わるものもあるので、安易に五十肩だと決めつけてしまうのは少し危険かもしれません。

痛みの原因をよく見極めて対処していくためにも、肩の関節痛の原因や症状、その対処法まで、詳しく解説していきます。

肩の関節痛の原因と症状とは?

肩の関節は、体の関節の中でも最もよく動く関節だと言われています。

その広い動きを可能にするために、肩の関節は他の関節のように骨同士がしっかりと組み合っているわけではなく、周りの筋肉や腱が骨を支えることで成り立っています。

ですから、肩の関節の痛みには筋肉や腱が原因となるものも多くあります。

肩の関節痛は、主に加齢によって肩周辺の筋肉や腱が老化することで炎症を起こしやすくなっていて、痛みを引き起こしていることが考えられます。

加齢による肩の関節痛のうち、代表的なものに四十肩や五十肩があります。

どちらも正式には、肩関節周囲炎という病気で、発症した年齢によって呼び方が変わるだけで原因や症状に違いはありません。

しかし、肩の痛みは腱板損傷や石灰沈着性腱板炎など、別の肩の疾患であることも考えられるので、症状をよく見極めることが大切です。

また、場合によっては関節リウマチや変形性肩関節症など早期の治療を必要とする疾患や、肩が痛むにも関わらず原因が肩以外にあるものもあります。

特に左側の肩が痛む場合、狭心症や心筋梗塞など心臓の疾患が原因となっていることもあるので、気を付けたいですよね。

それでは、肩の関節痛には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。

原因となりやすい病気について詳しく見ていきましょう。

四十肩五十肩(肩関節周囲炎)

加齢に伴って最もよく起こりやすい肩関節のトラブルのひとつに五十肩(肩関節周囲炎)があります。

主に40代~60代で起こりやすく、症状としては突然肩に激痛が走り、肩が上がらなくなったり、動かせなくなったりします。

原因ははっきりとは分かっていませんが、加齢に伴い肩の周囲の筋肉や腱が衰えたり固まったりすることによって、ちょっとした動きでも傷つきやすくなり、それが痛みや炎症に繋がっていると言われています。

痛みがひどい時期は、安静にしているときや寝ているときでも痛みに悩まされ睡眠不足になってしまうこともあります。

痛みが生じてから2週間程度は痛みで肩が動かせない状況が続きますが、痛みは徐々に軽くなり、1~2年後にはほとんど痛みを感じなくなり、肩の可動域も徐々に回復します。

五十肩は多くの人に見られる症状ですし、放っておいても自然と治るものなので軽視してしまいがちですが、肩の痛みを伴う疾患には腱板損傷や石灰沈着性腱板炎など他の病気も考えられます。

他の病気の場合は病院で適切な治療をすることが必要になるので、「五十肩なら病院に行かなくても大丈夫だろう」と簡単に判断せず、自分の症状や状態をよく確認するようにしましょう。

腱板損傷(腱板断裂)

五十肩と同じく、加齢によって起こりやすい肩の病気に腱板損傷(腱板断裂)があります。

肩の周囲にある4つの筋肉と上腕骨を繋いでいる腱のことを腱板といい、この腱板が外傷や老化により傷ついたり断裂したりする疾患です。

症状としては、肩を動かすときに痛みを感じたり、夜寝るときや安静にしているときも痛んだりするなど、五十肩とよく似ていて、間違えられやすい疾患でもあります。

しかし、五十肩と違って肩が完全に固まってしまって動かないということは少なく、肩を上げるときに反対の手で持ち上げるようにすると、耳のあたりまで肩が動くのが特徴です。

五十肩の場合は、ある一定以上の範囲には肩が上がらなくなるので、反対の手で支えても耳まで動かすことはできません。

また、腱板損傷の場合は肩を上げる途中で痛みが生じるのに対し、五十肩の場合は肩が動く範囲まで上がり切ったところで痛みを生じるといった違いもあります。

とはいえ、症状には個人差があり、それだけで判断するのは難しいので、心配な場合は、整形外科などを一度受診してみたほうがいいでしょう。

石灰沈着性腱板炎

突然肩に激痛が走り、耐えられないほどの痛みがある場合、石灰沈着性腱板炎という病気の可能性があります。

主に40代~50代の女性に起こりやすいようです。

何らかの原因で肩の腱板に体内のカルシウム(石灰)が沈着し、それが溜まっていって関節内に流れ込んだときに炎症が起こり、耐えられないほどの痛みを引き起こします。

ひどいときには、腱板を断裂させてしまうこともあります。

症状としては、発症時の激痛の他に、夜や安静時も肩が痛む、肩を回せない、動きが制限され腕が上がらないなどの症状があります。

症状が五十肩とも似ていて間違えやすい疾患ですが、五十肩が肩を動かしたときに痛みが起こって発症するのと違って、石灰沈着性腱板炎は寝返りなどの拍子でも激痛が起こります。

石灰沈着性腱板炎の場合は治療が必要になるので、整形外科など専門の外来を受診するようにしてくださいね。

変形性肩関節症

変形性肩関節症とは、加齢などが原因で肩の関節の軟骨がすり減ったり骨が変形したりすることにより、肩に痛みを生じさせる疾患です。

肩に限らず、関節やその中にある軟骨は加齢によって少しずつ衰えていき、関節を使えば使うほどすり減っていきます。

軟骨がすり減ると、関節の中で骨と骨とがぶつからないように防いでいたクッションの役割をしていたものがなくなってしまうので、骨と骨が直接ぶつかってしまい、変形や痛みを引き起こしてしまいます。

症状としては、肩関節の痛みやこわばり、可動域の制限などがあります。

体の関節のうち、肩の関節は膝や股関節と違って体重がかかる関節ではないので、変形性肩関節症の発症率はそれほど高くはありません。

しかし、腱板損傷や脱臼などの肩の疾患によって、軟骨や靭帯が傷つくことが原因で関節の変形を引き起こしてしまうこともあるので、注意が必要です。

肩以外に原因があると考えられる疾患

関節リウマチ

関節リウマチは自己免疫疾患のひとつで、何らかの原因で免疫システムが誤作動を起こし、自分の体の関節を攻撃し破壊してしまうという病気です。

そのため、肩だけでなく手の指や足などの関節の痛みやこわばりを伴うことが多いです。

特に朝30分以上も手の指などのこわばりが気になるといった場合、リウマチを疑ってみたほうがいいかもしれません。

また、関節の症状だけでなく、微熱やだるさなどの症状を伴うこともあります。

リウマチは早期発見と早期治療が非常に大切な疾患なので、リウマチかなと思ったらすぐに専門の病院を受診することをおすすめします。

頚椎症椎間板ヘルニアなどの首の疾患

肩が痛むのに、どうも肩の病気の症状と当てはまらない…

そんな場合は、痛みが首の異常からきていることも考えられます。

私たちの首には大事な神経がたくさん通っていて、その首に異常が起こると、神経が繋がっている肩や腕などの他の部位に症状が現れることがあります。

頚椎症や椎間板ヘルニアなどは、首の骨の変形によって神経が圧迫されるために肩の痛みを生じさせている可能性があります。

背中が痛んだり、手が痺れたりするといった症状も伴うことがあるので、自分の症状をよく確認することが大事です。

狭心症心筋梗塞などの心臓の疾患

左肩が痛む場合、狭心症や心筋梗塞などの、心臓疾患の前兆かもしれないので注意が必要です。

左肩だけでなく、みぞおちや左手の小指など、体の左上半身に痛みを感じることもあります。

これらは放散痛といって、本当は心臓が痛みを訴えているのだけれど、脳がそれを正確に捉えられず、同じ神経を通る別の場所の痛みだと勘違いしてしまうために起こるものです。

日頃の生活習慣が心臓に負荷をかけている恐れのある方は、ただの肩こりだと思わず、一度きちんと調べてみたほうがいいかもしれません。

肩の関節痛の対処法

肩の関節痛は、五十肩や腱板損傷など肩の周囲の筋肉や腱からくるもの、変形性肩関節症など骨や軟骨の変形が原因のもの、関節リウマチなど肩以外に原因があるものとさまざまです。

そのため、肩の関節痛は、原因となる症状によってそれぞれ対処法が異なります。詳しく見ていきましょう。

四十肩五十肩の対処法

五十肩は、症状の推移によって急性期慢性期回復期の3つの期間に分けられます。

発症から2週間ほどの期間を急性期といい、この時期は痛みが強く安静にしているときや寝ているときも鋭い痛みに悩まされ、肩の可動域も狭まります。

その後、慢性期と呼ばれる時期に入り、少しずつ痛みは治まりますが、肩の可動域は元には戻らず、頭の後ろで手を組むなどの動作はできなくなるなど、日常生活に支障が出ることもあるようです。

そして、6ヶ月~1年程度経つと回復期に入っていきます。

回復までの時間は個人差がありますが、およそ1年~2年で肩の痛みはほとんどなくなり、また肩の可動域も少しずつ回復していきます。

しかし、慢性期や回復期に適切なケアを怠ると肩の組織が膠着して可動域が狭いままになってしまったり、五十肩の症状が回復するまでに何年もかかったりしてしまいます。

早めの完治を目指すためにも、慢性期や回復期には肩関節のストレッチなどでしっかりとケアをしていくのがいいでしょう。

五十肩のケアとしておすすめの運動は、振り子運動です。

痛まないほうの腕を机などについて少し前かがみの姿勢をとり、痛むほうの腕をだらんと伸ばして前後に振り子のように動かします。

痛みがそれほどひどくないようなら、ペットボトルや軽いダンベルなどの重りを持って運動を行うといいでしょう。

この運動で、肩回りの腱が伸びたり筋肉が解れたりするので、肩の可動域を広げることもできますよ。

また、肩甲骨を動かす運動も、五十肩の予防とケアの両面で有効です。

肩をすくめて戻す上下の運動や肩甲骨を前後に動かす運動、腕を回して大きく肩を動かす運動、肘を反対の手で引っ張って肩の関節を伸ばす運動など、筋肉の柔軟性を取り戻すためにも積極的に取り入れたいですね。

五十肩は、ほとんどの人が1年ほどすれば痛みが軽減するので、整形外科などを受診せずに終わる人も多いのですが、五十肩の症状は腱板損傷などの他の病気とも似ているので、安易に判断するのは危険です。

腱板損傷や石灰沈着性腱板炎などは自然治癒が難しく専門の治療が必要となりますから、特に痛みがひどい場合や、他の病気が心配な場合は一度整形外科を受診してみたほうがいいかもしれませんね。

それ以外の疾患の治療法

五十肩は多くの場合自然に痛みがなくなることが多いので、そのままにしてしまうことも多いのですが、他の肩の痛みを伴う疾患とも症状がよく似ているため注意が必要です。

肩の痛みを伴う疾患は放っておくと手術でしか治療ができなくなるものや、心臓など重大な臓器に関わるものもあるので、ただの肩の痛みだと思わずに一度病院で診てもらうようにしてくださいね。

とはいえ、実際に病院でどんな治療をするのか、手術は必要なのか…など、不安は尽きませんよね。

基本的には病院での治療のうち、手術は最終手段とされることが多いので、すぐに手術という心配はしなくても大丈夫です。

ここではそんな不安を少しでも解消するためにも、肩の痛みを伴う代表的な疾患に対して、実際に病院でどのような治療を行っていくのか、簡単にまとめました。

腱板損傷(腱板断裂)

腱板損傷(腱板断裂)には、主に外傷によるものと加齢に伴って自然に起こるものに分けられます。

転倒などの外傷による腱板損傷の場合は、1~2週間ほど三角巾などで固定して安静にすることが求められます。

加齢に伴って自然と損傷が起こっている場合は、他の腱や筋肉が腱板の代わりをしていることもあるので、経過や様子を見ながら鎮痛剤や関節内の注射、またリハビリなどの運動による治療を行うことで痛みが軽減されることが多いです。

腱板が完全に断裂してしまっている場合や痛みがひどく眠れない場合などは、腱板の縫合手術をすることもあります。

基本的には患者さんと話し合いながら、日常生活にどのくらい支障が出ているかで手術の有無を決めていくようです。

石灰沈着性腱板炎

石灰沈着性腱板炎は、肩の関節内にカルシウムが沈着し溜まることで炎症を引き起こしています。

そのため、治療としてはその石灰を除去する、また患部の炎症を抑える方法が主に用いられます。

石灰沈着性腱板炎は非常に痛みの強い疾患なので、痛みを抑えるために、ステロイドやヒアルロン酸などを患部に注射したり、消炎鎮痛剤を内服したりします。

痛みが収まるにつれて、カルシウムは自然と体内に戻っていくことも多いようです。

また、患部の石灰を注射で破り、直接吸引して石灰を除去するやり方もあります。

石灰は時間が経つにつれてミルク状から石膏状に固くなっていき、そうなると摘出のために手術を行うこともあるので、早めの対処が肝心ですね。

変形性肩関節症

変形性肩関節症は、関節の変形や痛みを伴う疾患で、一度変形してしまうと自然と元には戻りません。

基本的には手術をしない治療が中心で、痛みを抑える鎮痛剤や、関節内への注射、肩の可動域を広げるなど、肩の筋肉の柔軟性を高めたりするリハビリなどを行っていくことが多いようです。

痛みがひどい、また肩の可動域が制限されて日常生活に支障が出てしまうなどの場合は、人工関節を使った手術も検討したいところですね。

関節リウマチ

関節リウマチは自己免疫疾患のため、完全な治療法といったものがありません。

以前は炎症や痛みを抑えるだけといった対処療法しかありませんでしたが、最近はリウマチの進行を抑える薬品も開発されていて、早期発見早期治療により、ほとんど支障なく日常生活を送ることができるようにもなってきました。

リウマチが進行して破壊された関節は元には戻らないので、リウマチかなと思ったらすぐにリウマチ専門の外来を受診するようにしてくださいね。

頚椎症椎間板ヘルニアなどの首の疾患

頚椎症や椎間板ヘルニアといった首からくる肩の関節痛は、首の状態を改善することが重要です。

頚椎症や椎間板ヘルニアの場合、首の骨と骨の間にある軟骨である椎間板が変形したり飛び出したりして、神経を圧迫していることが主な原因となっています。

そのため、姿勢を矯正したりコルセットを装着したりといった治療法が主に用いられます。

痛みや症状の程度によって治療法は変わってくるので、まずは一度整形外科を受診し、専門の医師に話を聞いてみるのがいいかもしれませんね。

狭心症心筋梗塞などの心臓の疾患

肩の関節痛のうち、特に左肩が痛むときには狭心症や心筋梗塞などの心臓の疾患が関係している可能性もあります。

喫煙やストレス、運動不足などで心臓に負担をかける生活を送っていたり、心臓が痛くなったりしたなど、思い当たるところがある人は必ず一度専門の病院を受診するようにしましょう。

心臓の発作は突然起こり、死に直結する恐れもあるので、そうなる前に予防していくことが大変重要です。

ストレスを溜めない、健康的な生活を送るなど、自分の生活習慣を見直していくことも大切かもしれませんね。

まとめ

年齢を重ねることで悩まされることの多い肩の関節痛。

その代表的な症状である五十肩は、肩周辺の筋肉や腱の老化によって炎症を起こしやすくなっているために引き起こされることが多いです。

肩に限らず、関節の痛みは筋肉や腱の柔軟性が衰えていることから関節痛を引き起こしていることもあるので、日頃から肩甲骨周りをよく動かして筋肉を解すことを意識していきたいですね。

五十肩は放っておいても痛みがなくなることが多いので、病院に行かなくてもいいだろうと思ってしまうことも多いのですが、腱板損傷や石灰沈着性腱板炎などの他の肩の疾患と違えてしまう可能性もあるので注意が必要です。

また、肩は首など他の部位の神経とも繋がっているため、頚椎症や椎間板ヘルニアといった首の疾患や、狭心症や心筋梗塞といった心臓の疾患が肩の痛みの原因となっている場合もあります。

そういった疾患の場合、放っておくと手術が必要になったり、深刻な状態に陥ってしまったりすることもあります。

なんだか肩が痛むな…と思ったときには、自分の症状をよく見極めて適切に対処していくことが大切かもしれませんね。